死神「鈴」 死神という職の表舞台から姿を消して、もう3年にもなるが、そ の間、私は三途の船守として、様々な魂を運んできた。それを見る につけ思うのが、魂の質の変容。今の魂は、昔とは違い実に小さい。 魂の大きさは、その人のかつての交流度合いに影響する。その魂が 小さいということは、生前その人は、孤独した人生を歩んでいたと いうことか、あるいは、実にどうしようもない犯罪者であったのか。 少なくとも、私のところに運ばれてくる魂は、小さいものが少な くない。今の表の担当が、殺しを妙に渋るところがあるから仕方が ないのかもしれないが、もしも、これが今の前任、つまり、私と、 私の元恋人であればどうなっていたのだろうか。 そんなことを思う。とはいえ、彼は、人を殺めすぎたのは事実で あるし、その後も死神としての権限を失ったにも関わらず、大量に 人を殺し、一人の少年の人生を狂わせた。その業によって、今は無 限の牢獄に幽閉されている。 ふっと、昔のことを思い出す。ところで、彼をそれほどまでに狂 わせたのは、私ではなかっただろうか。その罪をはっきりと認識で きない限り、私はいつまでもこの三途の河をたゆたい続けなくては ならないのか―― 一 「ホットミルクを」待ち合わせの喫茶店に入った彼は、私の前の席 に座ると、いつものようにホットミルクを注文した。私は、渋面を 作りながら、彼に言う。 「あのさぁ。いくらアイツがそれが好きだからって、合わせること ないじゃん」 「いやいや。こういうのは常日頃からのアピールが重要なんだ。あ と、お父さんのことをアイツって呼ぶのは良くないな」 彼は、肩を竦めながらそんなことを言う。いつものやり取り。毎 回同じことを聞くのは、私は、彼のその気障な態度が割と気に入っ ていたからだった。 ウエイターがホットミルクを持ってきて、奥に戻ると、彼は鞄の 中から一冊のファイルを取り出した。彼は、死神にしては珍しくマ メで、担当地区に住む全ての人間の寿命をリストしていた。私たち は、業務の無駄を少なくする為に、仕事の前に必ずミーティングを している。 基本的には、寿命の少ない順番に殺すことになるのだが、その住 んでいる地域がバラバラだと、仕事が面倒なので、地域ごとに順番 を決定できることもこのファイルの便利なところだった。 私の父は、このファイルのことを、当時人間の間で流行っていた 漫画の名前を使って揶揄していたが、その内実では、その有用さを 痛感していたらしく、今では、父の部屋のパソコンの中には、この ファイルの改良版が保存されている。 私の父が、彼のことを気に入っていたのは、これが一つの理由で あろうと、私は考えている。 私たちは、ミーティングを終えると、喫茶店から出て、今決めた 対象を殺しに行く。彼は3人。私は2人。選ばれたのは、A地区と B地区で寿命が残り3日以内の人たち。 「どうだ。仕事が終わったらどっかに遊びに行かないか」彼は、仕 事の前に必ず私にこう聞いてくる。 「まぁ、考えとく」そして、私もいつものように答えた。 二 死神の仕事というのは、表と裏で随分と毛色が違う。表の方は、 かなり動的で、裏の仕事は静的だ。言い換えると、表の仕事は派手 で、裏の方は地味、ということになる。 それも当然で、表の仕事は主な業務が殺しになる。一昔前までは、 死んだ直後の人の魂を迷わないように裏方まで送り届ける仕事だっ たらしいが、今は殆ど寿命の少ない人間を早めに殺すのが仕事にな っている。 勿論、この仕事は死神だけに与えられた特権で、普通の人間が殺 しを行った場合、寿命の大小に関わらず、死神によって罰せられる。 これは特別措置として認められている業務だった。 ここまで死神が特別な待遇を受けるのには、理由がある。死神の 業務は世界の安定に寄与するからだ。世界の表側に許される魂の含 有量には制限がある。しかし、人間の増殖のペースは、消滅のペー スを遥かに凌駕するため、魂の数が加速度的に増え、限界値に達し ようとしている。 魂の量が限界値に達するようになると、先ず最初に起こる反応が、 1人あたりに配分される魂の密度が下がる。魂密度を下げることに より、合計密度を減少させる。しかし、魂の密度が小さいと、その 人間の人間性に支障をきたすことになる。 つまりが犯罪者。近年増加傾向にある、凶悪犯罪はその現象に一 部原因がある。 死神は、その傾向を止めるために表の魂の数を減らし、彼の世に 戻す仕事をしているとも言える。 しかし、死神、特に表の死神は、直接人を殺すことになるので、 その精神への負担は計り知れない。中には、自らの精神に異常を来 たし、他の死神に討伐される者もいる。 さて、私は大丈夫なのか、と考えると幸い、彼が私の担当分を出 来るだけ穏やかな方面に割り当ててくれているので、まだ大丈夫だ った。 今、今日のノルマである2人目を殺したところだが、私がいるの は刑務所であり、殺したのは明日殺される死刑囚だった。良心の呵 責はまだ緩い。 そんな彼の心遣いに私は感謝しながら、その魂を三途の河原に案 内する。 三 死神の仕事についてから、特に僕が思うのは、何故人を殺すのか、 ということだ。例えば、目の前に転がっている死体は、生前、つま り先ほどまで、病魔と戦っていた。この人を殺すということは、簡 単な話、その人の人生、病魔との戦いを一瞬で終わらせることにな る。それは、その人に対する冒涜になりはしないか。人生とは自然 に終わるべきもので、我々死神が干渉してはいけないのではないか、 そんなことを思うが、仕事だから仕方がない。 結局、何故人を殺すのか、という解答は、僕にとってただ仕事で あるから、に過ぎない。人を殺してはいけない理由ならば、いくら でも思い浮かぶが、殺す理由は一つしか思い浮かばないのは、この 仕事に向いていないからなのだろうか。 逆に言えば、僕が相方の鈴よりも多くの人を殺すのは、鈴に負担 を掛けたくないからだった。人を殺すというのは、思いのほか重圧 になる。殺した人の数だけ、僕の魂は鎖で縛られる。 せめてもの弔いに、と僕は殺した人の名前を紙に書き、それを土 に埋める。 仕事が一段落つき、僕は自宅に戻る前に、病院に寄ることにする。 鈴の父親が経営している病院だ。 「失礼します」 僕は、院長室の扉を開けながらそう、言った。午後10時。普通 ならば非常識な訪問と文句を言われるところだが、僕達にはこの時 間が標準だ。 「なんだ。君か」 院長先生は、デスクの前のソファにどっかりと腰を下ろして座っ ていた。その対面を指差して私に座るように促す。 「鈴はまだ戻って来ていないがね」 「そうですか」 私は、今日の成果を報告し、明日以降の予定を話す。週の終わり には、必ず院長先生に現状を報告し、その後の予定を話すことにし ているのだ。 「相変わらず、君はマメだね」 「適正な業務の為ですよ」 院長先生は苦笑しながら、僕の前にホットミルクを差し出した。 僕は、どうも、と軽く会釈をしてカップに口を付ける。 「最近はどうかね」 「何がですか?」 院長先生の言葉は常に何かが欠けている。それが逆に僕の心を動 揺させた。 「何でもだ」 「何でも……。例えば、鈴さんとのこと、とかですか?」 「……まぁ、それでも構わないが」 こういう時に、しっかりと渋面を作るところが、院長先生の人間 らしいところだ。そして、鈴ともよく似ている、と思う。 「別に、大したこともありませんよ」 「……そうか」 院長先生の渋面が少し和らぐ。そして、直ぐに表情を戻した。 「ところで、最近、このリストと現状が一致していないように見え るが」 ファイルを指差しながら、院長先生は僕の顔を覗き込む。全てを 見透かすような深い瞳。その漆黒の奥には僕の心が映されている、 そんな錯覚を覚えた。 「僕もやや気になっていたところです。おそらく、イレギュラーな 事態が発生しているのかもしれません」 「ほう。イレギュラーな事態とは」 こういう時に、院長先生は疑問符を使わない。疑問文なのに、口 調は完全に断定形だ。 「外的な因子です。例えば、人間による連続殺人とか」 「……まぁ、あり得ない話ではない」 院長先生は、そういってパソコンに何かを打ち込んだ。僕の方か らは何を打ち込んでいるのかは全く見えない。 「しかし、院長先生も人が悪い。こっそりと僕のデータの裏を取っ ているとは」 「別に君を信用していない訳じゃない。適正な業務の為だ」 先に言った僕の言葉で返されて、僕は完全に閉口した。狡猾。院 長先生が他に何を考えているのかが読めない。 「あぁ。それと、いつも鈴の方に、簡単な人間を充ててくれている のには感謝しているよ」 「別にそういう訳ではありませんよ」 そう言って、僕は院長室から出ようとする。その背中に、院長先 生の声が掛けられた。 「さっきの話だが、本当に外的な因子ならば良いがね」 その言葉には、微かに笑みが含まれているような気がして、僕の 心が少し泳いだ。 四 死神には、周囲の寿命濃度をモニターする力がある。基本的には、 私たちはその方法を使って寿命が尽きそうな人を見つけて殺してい る。だが、最近は、彼の作ったファイルを参照している為に、殆ど その力を使っていなかった。ファイルのデータでおおよその場所を つかむ事が出来るし、使ったとしても大した範囲を検索はしない。 だから、何気なくその能力を使ってみたときに驚いた。明らかに 寿命の濃度が異常に減っている。ミーティングで話していたよりも 倍、いや場所によっては数十倍の魂が無くなっていた。 私は、この事実をすぐに父に報告した。父はこの事態に驚愕し、 すぐに対策を打つことを約束してくれた。今日は、週の終わりなの で、彼が父親に会うはずだった。その時に何らかのアクションを起 こすだろう。 私は、両手で肩を抱いた。全身に寒気がこびりついている。一体、 何が起きているのか。基本的に寿命の大量消失には、外的因子とし て、殺人鬼の発生や、災害が関与している。しかし、これは殺人鬼 にしては多すぎるし、災害にしては少なすぎる。中途半端な現象。 その意味するところは、死神の関与だった。 携帯電話の着信音が鳴る。父からのメールだった。 ――非常事態だった。 五 死神には大鎌が付きものだ。実際に、死神の武器として死神の大 鎌というものが準備されている。その性質は、人間の寿命を全て刈 り取り、かつ万が一にも、再生することがないように心臓を抉り取 る。最も効率のいい性質を持った武器であるが、僕はそれを使わな い。 死神の大鎌は、その言葉の通り大きい。その為に小回りが利かず に、一度に大量の相手と対峙する場合に不利がある。2人や3人な らばまだ問題がない。相手の数が10を越えたときには、死神の大 鎌はあまり意味を成さない。威嚇効果こそあれ、死という世界に足 を突っ込んでいる人間たちにはそれすら意味が無いからだ。 だから、僕は、死神の大鎌ではなく、もっと効率のいい武器を使 う。それは、拳銃である。一撃で相手を絶命させ、かつ連射性能に 優れたものであれば、あっさりと集団を一掃出来る。 ただし、サブマシンガンは使わない。美学に反するからだ。僕が 使うのはオートマチックのハンドガン。ただし、連射性能は大幅に 改善されている。何故か。この拳銃が撃ち出すのは弾丸ではなく、 魂。昔、人間の世界で流行っていた漫画の中に似たような武器があ ったがそれを応用させて貰った。 死神である以上、魂を使うことは容易い。それに、今まで誤魔化 してきた分の魂が大量に溜まっている。 僕は、病院を出た後、鈴の姿を探した。広範囲の寿命感知。特性 として、死神の位置座標も表示できる。それによると、鈴は、こち らに向かってきていることがわかった。 どうやら、先ほどの院長先生のキー入力はメールを送っていたん だな。と、僕は納得する。 姿を、死神の仕事着に替え、僕は、鈴が到着するのを待った。 六 「人の死には浪漫が溢れている。そうだろう?」 私が、彼のところに辿り着いたとき、彼は恍惚とした表情で私を 見た。 「これはどういうことかしら?」 私は、彼の周りに漂う魂の一つを指差しながら言った。その数、 千に至りかねない。 「見ての通り。矮小な魂だよ」 「ふざけないで」 彼は、口元に笑みを浮かべた。凍りつくような微笑。ただし、そ の目は笑ってはいない。 「罪人の魂は実に矮小だ」 彼は、1人で話し始めた。 「この矮小な魂が、他の善なる魂を壊し喰らう。これは、問題だ。 実にね。それに、この規模でも総和は1人の善人に満たない。殺し たところで何の問題もあるまい。むしろ問題を未然に取り払う。こ れは善行だ。違うかい?」 「……」 「君たちは、通例の慣習に囚われ過ぎている。適正な業務の執行の 為には、時にして、型破りな行動も必要だ」 「……」 私は、無言のまま死神の大鎌を取り出し構えた。彼は、いや、こ の男は、危険すぎる。本能がそう語りかける。確かに、筋が通って いる。それに引き込まれそうな私がいる。だが、それ故に、ここで この男を滅せねばならない。 「ふん。僕を殺す気かい?」 「ええ。残念だけど」 「ふふ。その震えた手で、かい?」 大鎌を持つ手が震えている。これは……恐怖。私は、今、この男 に恐怖しているのか。 「違うよ。その震えは恐怖ではない。畏怖だ。圧倒的な審判者の前 に、人は、己の無力さを知る。正に今の君のように、ね」 「そんな馬鹿なことが」 「事実だよ。さぁ、僕と一緒に来るがいい。君には、この中途半端 な世界は似合わない」 「ふっざけるなぁ!」 私は、全身を奮い立て、その男に向かって突撃した。型も何もか も無視して、ただ死神の大鎌を中てるだけの突撃。 だが、その突撃は意味を成さなかった。その男の周囲の魂が弾丸 のように射出される。それは、突撃する私を正面から迎え撃ち、そ の男に近付くことも出来ずに、私は地面に倒れ伏した。 「それでいい。弱者は強者の前にひれ伏すんだ。もっとも君は今に 僕と肩を並べるに至るだろう。その時こそ、僕と君で世界を作ろ う」 そう言って、私は担ぎ上げられた。そのまま意識が落ちていく。 七 「待て」 鈴を担いだ僕の後ろに、馴染みの声が掛けられた。院長先生だ。 「そのまま鈴を下ろし、こちらを向け」 「断る、と言ったらどうします?」 場の空気が凍りついた。見なくともわかる院長先生の殺気が僕の 背中に突き刺さっている。 「わかりましたよ」 僕はそう言って、鈴を置いて、院長先生の方を見た。そこに立っ ていたのは2人。院長先生と、……誰だ。 「さてと、ファイルの作成の件はご苦労だった。まさか、ファイル を伏線にした快楽殺人とは思いも寄らなかったよ」 「お前は、……誰だ?」 僕は、院長先生の横に立つ、見るからに軽薄そうな男に聞く。 「少なくとも、お前よりは凄い人間だよ」 「ほう。人間の癖に偉そうなことを言うね」 「お前こそ、死神の癖に随分と態度が偉そうじゃないか?」 男は、へらへらと笑いながら返してくる。不愉快だった。僕は、 もう一度魂を展開する。圧倒的な畏怖を感じさせる為に。 「成る程。面白いね」 しかし、男は、相変わらずへらへらと笑っている。……何なんだ 一体。こいつは一体何なんだ。 「震えてるじゃないか?」 院長先生の声が遠くで聞こえる。珍しくはっきりとした疑問形だ。 そして、もっと珍しいことに、その表情にははっきりとした笑顔を 浮かべている。 「圧倒的な存在を前に、人は己の無力を感じる。そうだろ?」 「人間の分際で、分をわきまえろ」 「死神の分際で喚くなよ。 自分に恐怖を感じない存在に恐怖を感じるのは、どの生物でも変 わらずある特性だ。何故か。自分に恐怖を感じていないというのは、 相手が自分よりも優れている可能性を秘めているからだ。それは、 自衛の本能でもある」 「……だからどうした?」 「俺は、恐怖をまったく感じない欠陥品なんだよ」 そう言って、男は素手で僕の懐に入り込んだ。無意識で体が竦ん でいた僕は、反応が遅れ、魂を撃ち込むのが間に合わなかった。だ が、素手で寿命を刈り取ることくらいは出来る。いや、人間が、僕 の体に触れる。それだけで人間は簡単に気絶する。その瞬間を待て ばいい。 ところが、懐に入り込んだ男は、入り込んだだけで何をする訳で もなかった。ただ、僕を下から見上げにやにやと笑っている。 「ふざけるなぁ!」 僕は、男を蹴り飛ばそうとした。その瞬間――。 「特別措置執行」 院長先生の声がした。そして、僕の全身に鎖が巻きつく。僕の体 は鎖に絡め取られ身動きが取れない。 「これは――」 「罪状を述べよう。人間に対する不当な暴力行為の現行犯」 「な……!?」 「ただし、未遂につき、魂を奪うには値しない。しかし、死神とし ての能力を制限し、この地区での死神業務を永遠に禁止する」 院長先生は、そう言うと僕の胸の辺りに手を差し込んだ。 「院長先生……。僕を謀りましたね」 「君は……、鈴を傷つけたからね」 院長先生が手を引き抜くと、僕の魂の一部がごっそりと抜き出さ れていた。 「さて、あとは好きに生きるがいい」 そう言って、院長先生は、鈴を抱き上げて去って行った。 八 目が覚めた時、私は病院のベッドの上にいた。その傍らには父が 立っている。 「気が付いたか」 「……」 「彼のことは残念だった」 「……」 言葉が出なかった。色んなことが頭の中に渦巻いていて、自分が 何を話せばいいのか、その混乱が喉に栓をしている。 「少し話をしよう。死神という存在についてだ。 死神という存在は、決して人間と乖離した存在ではない。むしろ、 その根源は人間と同じ。彼の世に蓄積されている魂と寿命を元に成 り立っている。勿論、死神には魂に影響が出ないような防御機構が 用意されているが、それでも、人間と同様に精神に傷を負うことは 多い。まして、私たちの仕事は人を殺すことだ。当然のように、深 い傷を受ける。人間の精神は実に脆い。簡単に壊れる。それは死神 も同じ。彼の精神は死神としては充分過ぎるほど頑強ではあったが、 それでも、人を殺めすぎた」 そこまで言って、父は病室を出て行った。私は、一人取り残され た病室でさめざめと涙を流した――。 終章 死神という存在は、一種の業である。人を殺さなければ、世界の 均衡が崩れ、人を殺せば精神の均衡が崩れる。世界の為、自分の為、 その運命を生まれながらに背負った囚人。 果たして、その苦行に彼は耐えることが出来るのか。 最近、この地区に補充された死神は、父の病院の医師であったら しい。元人間。生まれながらにして死神の私たちですら壊れていく 精神の世界で、一度精神が壊れている彼は、果たして―― (完) あとがき これくらいで良いや、と思ったからこの辺で終わりで。今回の話 は、彼岸の姉の鈴(リン)の話。前作(『死神「彼岸」』)の中で の三途の河の船守。時系列としては、語りの部分は、前作の直後。 昔の話は、今から3年前の話。『死神「黒猫」』における殺人鬼 (黒猫の仇)と、鈴を巡る話にしたつもり。 今回、新たな人物を登場させたので、また違うストーリーを書く ことに。いつか読んだ本では、小説の話の膨らませ方の一つに、 「登場人物を増やすこと」ともっともらしく書いてあったけれど、 もっともだった。ストーリーの面白さはともかく、発想が次から次 へと出る手段になる。便利。 ちなみにどうでもいいネタばれ。 “彼”の台詞に「恐怖ではなく畏怖」という台詞があるけれど、 この台詞は、MTGをやっている時に自分がよく言っていた言葉。 “terror”と“fear”じゃ全然効果違うから、っていう。 ついでにMTGネタはもう一個仕込んであったりする。ヒントは コールドスナップのカード名、ってな感じで。 ばっはっはーい←ともだち風に